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これまで述べてきたように、

 理想は「プラスサム交渉」

 でも「シェアード交渉」が有効な時も、、、

 最終手段としては「ゼロサム交渉」も必要!

との認識に至りました。


■ ゼロサム交渉の基本プロセス

ゼロサム交渉は、前述のように「お互いの欲する利を奪い合う交渉」です。
典型的なのは、「価格交渉」ですね。

以降、価格交渉を例に、考えてみたいと思います。


【STEP 1】 現状分析

まず、交渉にあたっての現状についてしっかり理解しておきたいですね。
ここで、最低限やっておかなければならないことが、
「アドバンテージ分析」です。

つまり、交渉の切り札となる材料、制約となる材料を
徹底的に洗い出しておくわけです。
下記に示すような、アドバンテージを明確にしておきましょう。

(1)切り札

 ・交渉にあたっての「自社の強み」は何か?
 ・自社に今回の交渉相手以外に「代替候補」はいるか?
 ・自社に対して、相手が強い欲求を持っているか?
 ・それは何に対する欲求か?

(2)制約

 ・譲歩する材料が少ないと交渉の制約になる
 ・合意締結までに許される期間に制約がある
 ・交渉決裂した場合のダメージの大きさ

これらの理解が、交渉時のやりとりの材料になります。
一般に、自社にとっての切り札は相手の弱みに、
自社にとっての制約は、相手の強みになります。
あらかじめこれらの材料を明確にして、交渉シナリオを考えておきましょう。


【STEP 2】目標設定

まず、事前に準備をしておいてほしいのは、「目標設定」です。
それも最低2つの目標を設定してほしいところです。
以下、買い手の立場から説明していきますね。

(1)目標ライン

これが本当の目標とする価格で、最終的に「ココで買いたい」という
目標とする合意価格のことを指します。

この目標ラインの意義としては、あらゆる交渉プロセスが
目標に近づけるための行動として一貫させることを目指します。

一般に目標ラインを設定されることは多いと思いますが、
実は、それだけでは不十分なんです。

(2)防衛ライン

あわせて設定しておきたいのが、この防衛ラインとなります。
これは、「最悪ココまで譲歩するが、それ以上では交渉を諦める」
という価格を指します。

この防衛ラインはとても重要な役割を果たします。
一般に、交渉に臨んでいると、意外と冷静な判断力を失うことがあります。
本来であれば合意しないような「不利な条件をのんでしまう」とか、
「合意しても良い条件を拒否してしまう」ようなことが起きます。

ネットオークションなどの経験のある方はわかると思いますが、
指し値競争になってしまうと、ついヒートアップしてしまい、
想定以上の高値まで付けてしまうことなどが考えられますよね。


【STEP 3】 相手の戦術洞察

次に考えなければならないのは、相手の目標設定です。
交渉相手は、どれくらいを「目標ライン」と置いているのか?
いったい「防衛ライン」はどれくらいなのだろうか?

自分の目標と同様に、相手の目標もしっかり洞察する必要があります。

しかし、その洞察はとても困難です。
そのためには、あらゆる情報を持っておく必要がありますね。
いわば、ゼロサム交渉は「情報戦」です。

STEP 1で行ったアドバンテージ分析とともに、
事前に「市場相場」、「相手の取引状況」、「双方の強み弱み」など
可能な限り事前に情報を取得することが重要です。

また、交渉現場でも、価格提示前に様々な質問はできるはずです。
交渉相手の現状、抱える制約、強み弱みなど、うまく質問力を使って現状を把握し、
相手の目標を洞察しておきたいですね。



<質問による防衛ライン洞察の例>

中古オフィス家具買い取り業者の場合、、、

 買「オフィス家具を売却希望とのことですが、お急ぎですか?」
 売「そうなんです。できれば今月中には決めたいんです」
 買「どのような事情があるんでしょうか?」
 売「来月には移転をしなければなりません」
 買(、、、てことは“時間的制約”があるんだな)
 売「廃棄するくらいなら、売れないかと思いましてね」
 買(、、、てことは、“相場−廃棄コスト”でもOKだな)
 買「わかりました。それならすぐ買い取りましょう」


ま、こんなにうまくいくとは限りませんが、、、(^^)


【STEP 4】 切出しラインの決定

もうひとつのイベントが「切出し」です。
つまり、どちらか一方から「○○円」ではいかがでしょう?
という提案が交渉のスタートと言えるでしょう。

この切出しは、相手にひとつの情報を与えることになります。
つまり、買い手からの切出しは、
「少なくてもこれだけお金は出せます」という情報となるし、
逆に、売り手からの切出しは、「これ以上の価格にはなりません」
という貴重な情報です。

つまり、当方からの切出しラインは、交渉相手にとってみれば、
交渉相手の目標ライン、防衛ラインを洞察する貴重な材料となることを
理解しておかなければならないわけです。

私は、「予算はどれくらいをお考えですか?」
ストレートに聞いちゃう場合が多いです。
もちろん教えてくれないこともありますが、
誠意を持って対応していれば教えてくれることも多いですよ。


【STEP 5】代替候補の獲得と洞察

アドバンテージ分析でも触れたように、代替候補は重要です。
特定の相手との交渉時であろうとも、代替候補を確保する努力は必要です。
より良い条件の代替候補を持つことによって、
進行中の交渉を有利に進めることができるはずです


同時に、交渉相手にも代替候補が存在する可能性があります。
これも、様々な問いかけによって洞察する必要がありますね。




以上が、基本的なプロセスです。
それでは、次に「ゼロサム交渉のテクニック」を整理してみましょう。




株式会社シナプス 代表取締役 家弓正彦
Twitter : http://twitter.com/Kayumi


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