株式会社シナプスでは、企業研修の受託も行っています。
そこで、最近よく人事・研修担当の方と話をしていると、

「研修を一過性のイベントに終わらせず、
 そこで学んだスキルを実務に反映させたい」

という声を耳にします。


確かに、研修ではとても深い学びがあったとしても、
なかなかそれを定着化させ、現場の実務に反映させるのは難しいものです。

そんな実践での効果を狙うには何に留意しなければならないのでしょうか?

大まかに、弊社ではこのように考えています。


(1) 動機付け・気づき

まず、研修受講にあたって、
学びに対する前向きなスタンスを持っていることが必要です。

ま、これは当たり前と言えば、当たり前なんですが。
学びたいという欲求があって初めて研修は効果をもたらすんですよね。

その動機をもたらすには、、、

■ 出来ていないことを知る

受講生のマインドとして、まず、
「自分には、そのスキルが不足している」
「実務での行動としても出来ているとは言えない」
という認識が前提となります。

研修受講前に、「こんなことで狛江いませんか?」といった
問題提起をするなど、マインド作りから始めるとよいでしょう。

「わかっている」「知っている」と思った瞬間に、
学びに対するモチベーションは期待できないものです。

■ できるようになりたい

それを前提に、「できるようになりたい」と感じてもらうことが必要ですね。
このスキルを身につけると、「何ができるようになるのか?」とか
「どのような存在になれるのか?」といった期待利益を明確にし、
学びに対する欲求を引き出さなければなりませんよね。

■ ギャップを明らかにする

そうすると「出来ていない自分」と「出来るようになった自分」を
明確に描くことができ、そのギャップを埋めることに関心が向くはずです。


(2) 習得

私たちが提供しているマーケティングの研修プログラムを例にとれば、
研修中に学んでほしいことは、以下の3つです。

■ 知識

知識は「パワーの源泉」です。
やはり、知識を持っていると、説得力が生まれるし、
思考の生産性も上がります。当然、思考ミスも減らすことができます。
そういう意味で、やはり知識はしっかり学んでほしいんですよ。

そして、知識としてのマーケティング理論は文献でも学べるはずです。

■ 思考力

しかし、ここで重要なのは思考力です。

学びは実践に活かすことを目的としています。
しかし、マーケティング理論は、様々な業種業態を対象として、
それをできるだけ汎用的に使えるように標準化してしまっています。

ということは、残念ながら、そのマーケティング理論をそのまま
自社のビジネスに適用しても、使えるところと使えないところがあるんです。

そこから先は、自分の頭で考え、学んだ基礎理論を応用して欲しいんです。

■ 守破離

世阿弥の教えに「守破離」というものがあります。
これは、まずは基本となる型を学び、それを守ることが
学びのスタートだと教えています。

こまでは、研修で学んだ基礎理論をそのまま実践に適用してみるフェーズです。

しかし、やがて基本を破り、応用するステージが訪れます。
ここには、しっかり自分の頭で考えることで、汎用的な理論を
自社の環境に適合して、カスタマイズするイメージですね。

このステージでは、しっかり考えるチカラを活用することが必要です。

最後のステージでは、基礎理論から完全に離れ、
自分独自のやり方を生み出していくステージですね。

このように、最終的なゴールを目指すなら、
知識として「型を守る」ことを学び、思考力によって「応用」したり、
「独自モデル」を見出すことが求められるわけですね。

■ 体感ラーニング

しかし、知識を活用した思考プロセスとは、一朝一夕には変化しにくいものです。
そこで、私たちは「体感ラーニング」という考え方を持っています。

「体感」、、、つまり、身体で感じ取ってほしいんですよね。
知識の使いこなし方、モノの見方や考え方などなど、頭ではわかったつもりでも、
ヒトは皆クセを持っていて、それを変えるには時間が必要です。

そこで、できるだけ研修中には「疑似体験」をしてもらいます。
その体験が、思考の型を理解、体得するにはとても有効だと思うのです。


(3) 定着化

そして、研修後に定着させることが、とても難しく、とても重要なんですね。

私は、研修終了時には、必ず次のメッセージを送ります。

「皆さんが学んできたことは、とても有用なビジネスツールです。
 しかし、人間の記憶は1カ月で70%が失われます。
 だから、できるだけ早いうちに実務に適用して見てください。
 それが、最も有効な定着の手段なんです。」

「実務への適用」、、、これに勝る定着化のプロセスはないでしょう。

しかし、なかなか適用すべき実務が見当たらない、
あるいは、スピードを考えると慣れないスキルを使うとむしろ効率が落ちる、
ということもあろうかと思います。

そこで、「他者への説明」という手段もお勧めしています。

「実務への適用チャンスが無い方は、
 言うことを聴きそうな後輩でも捕まえて、
 『俺のマーケティング理論を聴け!』と言って、
 学んだことを説明してみてください。」

ヒトに説明することは、理解を定着させる効果としては絶大です。


その他、スキルの定着化には様々な工夫をしています。

「反復トレーニング」:研修の実践編 or 上級編など
「リマインド」:メルマガなどで知識をリマインドする
「通信演習」:演習課題を通信教育スタイルで継続してもらう
「実務演習」:実務への適用の一種ですが、担当業務での分析をしてもらい、
       プレゼンテーションの企画、オブザーバとしての参加

まだまだ、この定着化のプログラムは発展途上ですが、
多くの企業の人材育成には不可欠な取り組みであると確信しています。
ご関心のある研修のご担当、一度お話してみませんか?(^^)



株式会社シナプス 代表取締役 家弓正彦
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