2009年8月27日のTV東京「ルビコンの決断」にて、
大塚製薬の「ポカリスエットの開発秘話」をやっていました。

以前から、マーケティングの成功事例として
よく説明に使っていた商品なので、興味深く見ていました。
多くの示唆と教訓があったので、まとめてみます。


■ 開発の背景

有名な話ですが、大塚製薬は当時点滴液の最大手だったようです。
ある時、医者が点滴液を飲んでいるのを見て、
「身体に吸収の良い健康飲料」を発想したとのこと。
面白い視点ですよね。

【マーケターの教訓】
  異なる業界、商品、分野に発想のヒントがある
  それを、自社に適用してアイディアを考えよう!


■ 商品化のハードル

ジョギングブームとともに、商品化に取り組むことを決定。
運動などで汗とともに失われる「電解質(カリウムなど)」を補う
「健康飲料」というコンセプトで開発することになりました。

しかし、、、
味が最大のハードルだったようで、どうしても苦みが消えない。
甘味料を加えると苦みを抑えられるけど、それじゃ健康飲料にならない。
同時に「ガブガブ飲める」ことを目指すため、糖分は抑えたい。

思考錯誤の上、たまたま他の開発者が取り組んでいた
「粉末飲料」を混ぜたら、苦みが消えた。
どうやら、柑橘果汁が苦みを抑えるという発見を得られたそうです。

【マーケターの教訓】
  商品・サービスの存在意義に徹底的にこだわれ!
  そのコンセプトをブラすことなく、こだわれ!


■ 糖度の選択

糖度6.2%と7.0%のサンプルを試飲したところ、
ほとんどのメンバーが7.0%のものがおいしいと評価。
当時の清涼飲料水は甘いものが多かったんですね。

しかし、開発陣が実際に山に登り、
汗をたっぷりかいた後に飲み比べをすると、
全員が6.2%を指示したという。
やはり、顧客が実際に飲むシーンを想定しないと
正しい判断はできないということですね!

【マーケターの教訓】
  マーケティングの真実は「顧客の現場」にあり!
  研究室にも会議室にも真実はころがっていない!


■ それでも売れない

自信を持って投入した新製品「ポカリスエット」も、
発売当初は、「マズイ」、「変な味」と散々酷評されました。

その時、大塚製薬の判断は、
「顧客はこの味に慣れていない。徹底的に試飲してもらおう!」
と、大々的な無料配布キャンペーンをはったそうです。

草野球場、サウナ、温泉、街角、、、
徹底的に配布したサンプルは、初年度の販売本数を超えるまで配られました。
いやぁ、経営トップとして「新しい市場を創る」というミッションに
燃えていたとは言え、本当に勇気ある英断だったと思います。

そのうち、顧客がポカリスエットを飲むシーンを理解し、
味にも慣れ、その価値を理解してもらうまで啓蒙し続けたわけですね。

【マーケターの教訓】
  市場創出とは「顧客の啓蒙、教育」に他ならない
  信念をもって、時間をかけて、顧客を変える気概を持とう!


■ ■ ■

この大塚製薬の成功の裏話には、マーケターとして様々な教訓がありますね。

実際に、私は当時大学生で、水泳大会の事務局のアルバイトをしていました。
そのスポンサーが大塚製薬で、事務局の冷蔵庫にはポカリスエットが
常にいっぱい詰め込まれていて、自由に飲んでいいと言われていました。

貧乏根性丸出しの私は、タダと聞いてガブガブ飲んでいましたが、
最初は「なんてマズイ飲み物だろう!」と思っていたんですが、
一週間の大会期間を終えることには、すっかり好きになっていた経験があります。

新たな市場を創出するには、大きなハードルがたくさんあります。
その一つひとつを超えていくには、大きなエネルギーを気力を
要するものですが、その結果得られるものもそれにまして大きいようです。



株式会社シナプス 代表取締役 家弓正彦
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