大きな組織に所属していると、正しいと思っても、
なかなかそれを上司や関連キーマン、そして組織全体に理解してもらい、
実行に移してもらうのには高いハードルがあるものです。

それは、組織の硬直性やそこに所属するサラリーマンとしての
保守性によるところが大きいような気がします。

私も、以前勤めていた会社は大組織でしたから、
そのメリット・デメリットは身をもって痛感するんですよね。
当然、大企業は強大な経営資源を持っている、その反面、
意思決定には時間がかかり、どうしても動きが鈍くなりやすい。

そこで、そんな大きな組織を動かすための「社内政治力」について
ちょっとマジメに考えてみました、、、笑


■ 「社内政治力」とは?

まず、「社内政治力」をもう少し分解して考えてみることにします。

(1) 目利き力

大きな組織のなかでの「一人の個人」のパワーはちっぽけなものです。
そこには、社内キーマンを巻き込んで、自分の味方につけることが必要です。

自分の実現したい目標に対して、誰がパワーを持っているのか?
的確にキーマンを見出して、しっかり自分の味方を創りましょう。

と、ここまでは比較的わかりやすいのですが、
それだけではなく、誰と誰が「対立関係」を成しているのか?
それを把握しておかなければ、抵抗勢力のネガティブなエネルギーが発生し、
思いもよらない結果をもたらします。

人間の対立は感情的なものから来ることが多いですよね。
抵抗勢力の反対に直面すると、理屈では解決せず、必要以上のストレスがかかり、
皆さんの持つ時間とパワーのロスにつながってしまうものです。

人間は正直なもので、建前では対立をあらわにしなくても、
個人ベースで会話をしていると個人的な不満やグチなどに、
人間関係の実態が表れてくるものです。
日ごろのコミュニケーションなどで察知できるのではないでしょうか?

社内の人間関係には、常に敏感でありたいですね。


(2) 打算訴求力

その社内のキーマンを思い通りに動かすことが自分のパワーにつながります。

積極的に同意してもらい、さらに応援・支援を取り付けるためには、
「ここは賛同した方が俺にとっては得だな!」
と打算的な計算をしてもらうことが求められると思うのです。

前述の通り、一人ひとりのビジネスマンは組織に所属するサラリーマンですから、
「自分の評価が上がる」ことを餌にすることも必要でしょう。
つまり、そのキーマンの現在の関心事は何か?を考えてみるとよいと思うのです。

「社内で変革者イメージをつけたい」「部下からの人気をとりたい」
ここでも日ごろキーマンとはしっかりコミュニケーションをとることで、
キーマンのキャラクタや問題意識、欲求願望などを探っておきましょう。
あなたは、まさにそのキーマンの課題を解決するサポートをしてあげるのです。


(3) 人情訴求力

また、交渉相手は、ひとりの「人間」です。
とりあえず、その場だけでも「味方してやろう」と思わせるには、
「人間の情」の部分に訴えることも必要です。

人間の「情」としては、
「褒められらば、気持ちよくなる」し、「頼られれば世話してあげたい」
「好かれれば、好きになっちゃう」「期待をすれば、期待に応えたい」
という動物だと思うのです。

よって、コミュニケーションのなかで、
「敬っている」、「頼っている」、「ヒトとして好き」、「期待している」
というメッセージを行間に込めた対話をすることが求められます。

これらは、言い方を変えれば、前述の「論理性」に対して
「情緒性」と言えるでしょう。貴方は、人情で訴求できますか?


■ それでいいのか?

このように社内政治を動かすには、優れた基礎スキルが必要です。
しかし、そんな社内政治に奔走することは、どれだけの意味があるのでしょうか?
もちろん現実に直面すれば、社内政治を駆使しなければならないこともあるでしょう。
そして、誰もが社内政治に多大なエネルギーを使いたいとは思っていませんよね?

しかし、見方を変えれば、それも貴重なスキルアップ機会だと思うのです。
社内政治は、ビジネスマンとしてとても大切なスキルを使っています。
これらのスキルを磨くための貴重な経験と捉えてみてはいかがでしょう。


■ 「目利き力」=「人間洞察力」

鋭い「目利き力」は、ヒトに関わる洞察力、いわば「人間洞察力」です。
人間関係を見極めたり、その人の思考や欲求を把握する力だと思うのです。

そのためには、その人の立場、役割を客観的に把握するとともに、
日ごろの言動などから、パーソナリティや指向を理解することが大切ですよね。
そんなスキルがあれば「ヒトや組織のマネジメント」に能力を発揮できそうです。


■「打算訴求力」=「論理力」

また、ここで言う「打算訴求力」とは、自分に協力するメリットを
明快なロジックによって説得するチカラだと思うんです。

そのためには、筋道を立てて、協力する根拠を示し、納得感を醸成する、、、
それだけの論理的スキルがあるなら、もっと大きなことができそうですよね。

個人的利害によってキーマンひとりを動かすのではなく、
組織全体を動機づけ、自信を持って行動を起こさせるために用いたいものです。


■「人情訴求力」=「コミュニケーション力」

ヒトは感情の動物ですから、もちろん人情で動きます。
しかし、ここは「一時的に」ではなく、また「キーマン個人に」でもなく、
「持続的に組織全体に対して」信頼、共感を持ってもらえるように、
働きかけたいものです。

そのためには、相互理解をもたらず「コミュニケーション力」が必須でしょう。
これは、様々なビジネスの局面で必要とされるはずです。

まずは、相手の主張、立場、背景などを理解することからスタートし、
自分についても理解してもらう、そんなスタンスが求められています。

そんな双方向コミュニケーション、相互理解を心がけることで、
顧客や部下、上司の信頼感を獲得できるはずです。


■ ■ ■


こう考えると、どうやら「社内政治力」に長けている人は、
この貴重な基礎スキルを健全に活用することで、
まさに組織のリーダーとして、成果を発揮することができるように思います。


■ ビジネスマン生活は長くて短い

一般のビジネスマンとしての人生は、ざっと35〜40年程度と考えると、
目先の利害で行動するには、長いものですよね。
どっしり「自己のリーダーとしてのスキルアップ」を目指したいものです。

しかし、「リーダー」という大きな目標を考えると、
それは、意外と短いものだと思うのです。
リーダーとしての「スキルアップ」は様々な学習機会と現場体験によって
もたらされるものですから、貴重な時間を有効に使いたいものです。


ヒトそれぞれの「仕事観」は様々なものがあって良いと思うので、
必ずしもみんながリーダーを目指す必要はないでしょう。
しかし、自己成長によって得られる満足感ほど素晴らしいものはないと思うのです。

一度、自分の「仕事観」を真摯に見つめ直し、
長期的な「キャリアビジョン(将来の目標)」を考え、
短期的な行動(今、やるべきこと)をデザインしてみてはいかがでしょうか?



株式会社シナプス 代表取締役 家弓正彦
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