経営コンサルタントの仕事において、クライアントを怒らせることは簡単です。
いや、どんな仕事においてもクライアントとのコミュニケーションは、
常にリスクをはらんでいると言えそうです。

ビジネスにおける売り手の立場に立てば、
自分(商品)の価値をより大きく見せたいという「悪魔の誘惑」があります。
いや、プライベートでもそんな気持ちにかられることはありますよね。
しかし、それが致命的な落とし穴だったと気づくのは、
すっかり相手を不快にさせた後だったりするのではないでしょうか?

ということで、今回は「クライアントを怒らせる方法」を考えてみました。
皆さんは、クライアントを怒らせたこと、ありますか?


■ 信頼を築く前に上から目線

<悪魔のアドバイス>
経営コンサルタントは、クライアントに経営をアドバイスする立場ですから、
常に「先生」としての上位のポジションをとることが必須です。
そのためには、まずは最初が肝心です。
とにかく、相手に対して、威圧的に「上から目線」で語り、
「ああしろ!」「こうしろ!」と一方的に指示すると良いでしょう。
そうすることで「私は貴方より上の立場にいる」と思い知らせるのです!

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<家弓のアドバイス>

また、常にクライアントより「知識」「ノウハウ」
豊富に持っていなければならないという恐怖に怯えているんですよ。
その表れが、一歩間違えると不遜な態度に出てしまうのではないかと思うのです。

しかし、ビジネスの立場は常に対等ですよね。
そういう意味では、売り手は買い手に対して下手にへりくだる必要もありません。
クライアントは、コンサルタントに対して、
「彼なら適切なソリューションを提供してくれそうだ」と感じてもらえれば、
信頼し、適切な対価を支払ってくれるはずです。

常にクライアントとは対等な立場で最適なソリューションを探索したいものです。


■ 一方的に喋り、相手に話をさせない


<悪魔のアドバイス>
コンサルタントの最大の武器となるのは「流暢なトーク」です。
一般にコンサルタントには「弁の立つ」方も多いので、
その強みを活かすのです。

弁舌鮮やかに、一方的に喋り、相手を圧倒しましょう。
きっとクライアントは、貴方の喋りに感服し、尊敬の念を抱くはずです。

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<家弓のアドバイス>
確かにコンサルタントには弁舌鮮やかなタイプが多いようです。
そして、コンサルタントの職業的使命感として、
「なんとか有用なノウハウ提供しなければ、、、」
という強迫観念もあるはずです。
でも、それが逆にクライアントのストレスになることも多いようです。

コンサルタントの役割は、その経営のアドバイザーであり、
あくまで主役はクライアントですよね。
クライアントの望みは
「わが社のことを十分に理解し、最適な提案をしてくれること」
であるはずです。

それに対して、クライアントの言うことに耳を貸さず、
一方的にまくしたてるコンサルタントに信頼を寄せることはないでしょうね。


■ 相手の意見を全否定する


<悪魔のアドバイス>
コンサルタントの付加価値は、クライアントに新たな変革をもたらすことです。
そういう意味で、決してクライアントの意見に同調してはいけません。
必ずクライアントの主張は否定して、コンサルタント独自の見解を示し、
相手の意識変革を促しましょう。
仮に、クライアントがさらに反論してきても、「私の経験では、、、」と言って、
豊富な経験を武器にしてクライアントを論破し、服従させると良いでしょう。

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<家弓のアドバイス>
確かに新たな視点や考え方を示すことは、コンサルタントの重要な役割です。
上記の発想は、それが行き過ぎたケースといえるでしょうね。
まず相手の状況を理解し、主張を一旦受け入れるコミュニケーションをとりたいものです。

有名な対話法に「Yes But法」ってありますよね。
Yes:「確かにそのような考え方もありますね」
But:「しかし、このような考え方もあるのではないでしょうか?」

相手の言うことを常に否定的にとらえると
「現場の実情も知らないクセに、、、」とか、
「教科書的なことばかり並べやがって、、、」と反感を買うだけだと思うのです。


■ カタカナ言葉を並べてごまかす

<悪魔のアドバイス>
コンサルタントは、難解な経営専門用語を駆使して、
自分が知識豊富で、有能な人間であることをアピールしなければなりません。
特に、カタカナ用語を多用すると相手には自分の言っていることが理解できず、
「いやぁ、マイッタ!」と思わせる効果をも期待できるのです。
カタカナ用語を使うときは、大げさな身振り手振り、そして微笑みを浮かべて、
ちょっとNativeな発音を用いると効果絶大です。

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<家弓のアドバイス>
経営やマーケティング用語には、英語のまま用いられているものがたくさんあります。
これは、私も気をつけなければいけないのですが、
普段のクセが抜けずに、つい英語表記のまま喋ってしまうことが多いですね。

問題の本質は、カタカナを用いることではなく、相手に理解できない表現です。
ただ、逆にあまりに簡単すぎる表現は、クライアントに「舐められている」と
不快感をあたえてしまうかもしれません。難しいものですね。

あくまでコミュニケーションの基本は「相互理解」にあります。
相手の知識や背景をもとに、反応を見ながら、
相手の理解に合わせた説明、表現を適切に使いたいものですね。


■ できない理由を長々と説明する


<悪魔のアドバイス>
誠意ある対応として、出来ないことはクライアントにはっきり断りましょう。
その時、クライアントには「なぜ出来ないか?」という理由を、
しっかり納得してもらうことが必要です。
そのための根拠をできるだけたくさん挙げることができれば、
クライアントは諦めて、要望を取り下げてくれるはずです。
しかも、その出来ない理由がクライアントサイドの問題であると論破できれば、
貴方は一流のコンサルタントです。

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<家弓のアドバイス>
もちろん出来ないことは出来ないと真摯にお断りをすることは必要です。
しかし、何故出来ないか?という理由を長々と語ることは、
何も建設的な結果を残さず、クライアントはストレスを感じてしまうでしょう。
決してクライアントが実現したいことを諦めさせることが目的ではなく、
少しでも、クライアントの欲求に近づけるための代替案を示したいところです。

「これは出来ませんが、こんなやり方ではどうでしょうか?」

常にクライアントは提案を求めています。
私たちはプロとして、クライアントに代替案を提案し、
クライアントとともに最も望ましいソリューションを探索したいものです。


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あくまで、上記は家弓が「過去、クライアントを怒らせてしまった」ことを
もとに記述しているわけではありませんよ。念のため、、、(汗)
もちろん、反省すべきことはたくさん経験していますが、
現在、私が気をつけていることを整理したつもりです。

これらの5つのパターンは、クライアントとのコミュニケーションにおいて、
全てのビジネスパーソンが陥るリスクだと思います。

一度、クライアントコミュニケーションについて、
自らを振り返るのも良いのではないでしょうか?



株式会社シナプス 代表取締役 家弓正彦
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