第三回は、まさに質問を投げかける「その現場(オンサイト)」についてです。
■ ラポール形成
ラポールとは、もともと臨床心理学用語で、相互を信頼し合い、
安心して自由にふるまったり、感情の交流を行える関係が成立している状態を指します。
つまり、質問シーンで考えれば、本音で回答してもらえる関係ですね。
まず、ラポールを構築するには、冒頭の雑談が必要です。
意外とこの雑談力、難しいものです。
よく天候の話などが差しさわりがなくて良いと言われますが、
毎回毎回、天候の話ばかりでは、間が持たないですよね?(^^)
梶原しげる氏は、
「雑談も準備が必要で、引き出しを多く持つこと」
と言っています。
やはり、業界の話、顧客企業のトピックなど、
最低限の情報収集には努力を惜しまないことです。
■ モチベーションコントロール
その他、信頼関係を保つためには、相手の動機付けをする必要があります。
やはり、気持ちよく回答してもらいたいものですよね。
・リアクション
「頷き」、「相槌」、「短いコメント」は、相手に対する影響あるシグナルです。
これらのシグナルは、「私は、貴方の話を聞いていますよ」
そして、「それはとても有意義な話です」というメッセージを持っています。
・リフレージング
別名「ミラーリング」とも言い、相手の言葉をオウム返しにする方法です。
これも、リアクションと同じ効果を持っています。
・仮定法
これは、責任ある立場での発言が憚れる場合、
敢えて立場を変えて(仮定して)問いかける手法です。
「〜の立場だったら」とか「もし〜だったとしたら」といった問いかけ方ですね。
・ノンバーバルコミュニケーション
抑揚、語気、表情、姿勢、立ち振る舞い、、、
様々な言語(バーバル)以外の情報がシグナルとなっているはずです。
それが、相手のモチベーションに大きく影響を与えますよ。
■ 展開
最低限、聞きたいことを問いかければ「イシューが明らかになる」わけではありません。
質問と回答を繰り返していると、様々な展開が必要となってきます。
その展開のパターン、やり方について、考えてみますね。
■ NLPのメタモデル
NLPとは、「神経言語プログラミング」というコミュニケーション技法体系のこと。
そのなかで提唱された「メタモデル」が参考になります。
メタモデルの考え方は、
表層部(言葉に表れる部分)と
深層部(話し手が持っている本質的意図)の間には、
常に「省略」「歪曲」「一般化」が起こり、
ギャップが発生しているというものです。
ということは、質問に対する回答にも、
常に「省略」「歪曲」「一般化」が
起こっていると覚悟すべきですね。
・「省略」
「このままだと、状況はさらに悪化するだろう」
→ 「何を変えないとマズイ?」「何が悪化するの?」
・歪曲
「売上のことを考えれば、プロモーションの方が大事だ」
→ 「売上重視が基本方針?」
・一般化
「現在のやり方は変えられない」
→ 「何がその障害になっている?」「もし変えたらどうなるの?」
■ 展開のベクトル
・幅出し(ヨコ方向)
ひとつの論点に対し、情報のヌケモレを防止するために、
きめ細かく問いかけを続けることも必要でしょうね。
質問文の定石として「5W1H」も有効な問いかけだと思います。
・チャンクダウン(シタ方向)
情報をさらに深く掘り下げ、具体化を図る問いかけも必要です。
特に、回答が抽象的で、本質が見えない時など、
「具体的には?」とか「例えば?」といった問いかけで本質を理解しましょう。
また、トヨタの問題解決法で「Why?」を5回繰り返すというものがあります。
これも、チャンクダウンのひとつと考えられますね。
・チャンクアップ(ウエ方向)
また、話が枝葉末節におよび、本質が見えないこともあります。
その場合、一旦その話を引き取り、取りまとめて確認する作業が必要です。
つまり、「貴方が言いたいことはこういうことですか?」といったスタイル。
これを「パラフレージング」と呼びます。
こんな様々な展開の技法を用いて、メインイシューの本質に迫ってください。
■ Why?のネガティブ効果
チャンクダウンで、「Why?」を5回繰り返すという例を話しましたが、
実は「Why?」は非常に強いコミュニケーションワードで、
ネガティブな効果を持っています。
例えば、母親が子供を叱るとき、
「なんで、いつも言っていることが守れないの?」
なんていう言葉使いをしますよね?
これは、Whyで始まる疑問文ですが、その真意は「叱責」ですよね?
前述のメタモデルでも、質問には「Why?」を使わず、
4W1Hで問いかけると言われています。
実際に「Why?」を使わなくても、目的を達成することはできます。
How?「どうしたら良くなるか?」
What?「何が良い(悪い)のか?」
と言いかえるだけで、とても答えやすい質問になるはずです。
以上、場の創り方、質問の投げ掛け方などについてまとめてきました。
しかし、質問の現場では、想定外の出来事もあります。
そんなリスクについて、次回は話してまいりたいと思います。
株式会社シナプス 代表取締役 家弓正彦
Twitter : http://twitter.com/Kayumi
Tumblr : http://kayumi.tumblr.com/
コメント