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これまで、様々な仮説構築の技術について述べてきました。
簡単に、オーバービューしてみますね。

大まかに見えない事実について仮説を立てるには、
以下の手法が考えられます。


■ 将来予測
(トレンド分析、デルファイ法)
■ 定量仮説(フェルミ推定)

これらの仮説に加えて、様々な定性的仮説を考えることも多いですよね。
しかし、定性的なことについては、個人の先入観やクセが加わるリスクがあります。
そこで「俯瞰思考」が必要となるわけですね。


■ 俯瞰思考

  (Step1)MECEに可能性を拡げる
  (Step2)評価によって絞り込む

しかし、フェルミ推定にしても、俯瞰思考の評価においても、
なんらかの確からしい根拠を考える必要があります。
それには、2つの論理思考プロセスを採ることになります。
それが、「演繹法」と「帰納法」ですね。


■ 演繹法

「観察事項」に「一般的ルール」をあてはめて考えれば、「仮説」が導出できる。
これが演繹法です。それを使いこなす際に留意してほしいのは、
 ・ルールの本質を見極める
 ・ルールに思い込みを排除する
 ・様々なルールに目を向ける
といったところでしょうか。


■ 帰納法

いくつかのサンプルをもとに、共通するルールを見出して「仮説」導出する手法。
そのためには、「一致法/差異法」を用いることが一般的です。
重要なのは、「分析者の解釈」です。
どのような視点で共通ルールを見出すか?答えは一つではありません。


■ 仮説のブラッシュアップ

こうやって仮説らしきものを複数オプション持ちましょう。
そして、仮説を絞るために「必要となる情報」を明確化して、
情報収集に取り組みます。
くれぐれも「手あたり次第」情報収集するようなことのなきよう、、、(^^;


■ イシューツリー

「必要となる情報」を明確にするには、イシューツリーを描くことが有効です。
そこで「必要十分条件」を見出すよう、論理構築してくださいね。


■ 演繹法と帰納法の関係

まだ、述べていませんでしたが、演繹法と帰納法の関係について考えてみます。

演繹法は「一般的なルール」を判断材料とします。
その「一般的なルール」はどのようにして見出せばよいのでしょうか?
「一般的」と言っても、ここで欲しいのは「自分にとって有効なルール」ですよね。
必ずしも、理論書で述べられていることが適切とは限らないわけです。

ということで、演繹で用いるべきルールは、是非帰納法で見出してほしいのです。
基本は「自分のルールは自分で作る」というスタンスを持って下さい。

実務の中でのプロセスとしては、

(1)仮説構築に有効な情報を蓄積する
(2)それをもとに、仮説を構築する

ここまでが帰納法による仮説構築アプローチですね。

(3)ここで見出された仮説をルール化(汎用化)する
(4)そのルールを、様々な状況に適応し、仮説を構築する

この後半のプロセスは演繹法を用いています。

<事例>

(観察事項1)A社は業績見込みを上方修正して、株価が上昇した
(観察事項2)B社は決算発表で業績が伸び、株価を大きく上げた
(観察事項3)業績がヨコバイのC社には、株価の変動はなかった

 → (仮説)業績が伸びると、株価が上がる (帰納法)

(観察事項4)D社の今期業績は大きく向上する見込みである
  +
(一般ルール)業績が伸びると、株価が上がる (帰納法プロセスの結論より)

 → (仮説)D社の株価は上昇する (演繹法)

 → Action 故に、今のうちにD社の株を買っておこう!

ってな具合、、、


演繹法と帰納法を組み合わせることで、様々な状況で仮説構築が可能となるはずです。


■ 「Quick & Dirty」とは言うけれど、、、

どうしてもスピードを求めると、精緻さを犠牲にせざるを得ませんよね。
果たして、正確ではない仮説構築で良いのか?しかし、それで良いんです。
仮説構築は必ずしも「正確さ」を追求しないことがカギだと思っています。

私は、仮説は段階的に磨き上げていくものだと割り切っています。
初期仮説は、本当に「Dirty」に仕上げる。
しかし、それをキチンと検証して、ブラッシュアップを図る、、、
そんな繰り返しで、仮説はどんどん磨かれ、精緻さを増していく。
これが仮説構築のあるべきプロセスだと思うのですね。

また、仮に間違った仮説をもとに意思決定をしてしまったとしても、
しっかり前提となっている仮説を組織で共有していれば、
軌道修正は迅速に行えるはずですね。

誰にもわからないんだから「仮説」を立てても意味がない、、、
それは間違っていると思うのです。

やはり、何と言っても仮説構築には「Quick & Dirty」が必要なんですよね!


■ 仮説構築の組織学習

企業は組織で動いています。
したがって、仮説構築の技術も個人的に磨くだけではなく、
組織スキルとして定着させたいところです。

そのためには、仮説を構築するための仕組みが必要となります。

・初期仮説共有のしくみ
  既存情報を体系的に蓄積するシステム
  それをもとに初期仮説を検討する組織機能

・情報収集のしくみ
  情報収集を企画する組織機能
  情報収集部隊(営業部など)への依頼機能

・情報集約のしくみ
  的確に情報が集約されるしくみ
  それらを体系的に蓄積するシステム

・解釈/モデル化のしくみ
  定期的に棚卸をするしくみ
  or 目的を持って(中期計画策定など)、分析するしくみ

・組織共有のしくみ
  全社的に仮説共有するしくみ

こういった組織面、情報面、業務面のインフラを整えることが、
仮説構築力を持った組織を構築するためには不可欠でしょうね。

■ 最大の脅威

あまりに少ない情報から仮説を立てるという現実に直面すると、、、

「ハードルの高さに心が折れる」
「ダーティに対する恐怖心が生まれる」

ということになりやすいものです。
これは私にも当てはまることで、ちょくちょく心が折れています。(汗&笑)

そういう意味で、仮説を構築するにあたって、最も必要なのは、

 「折れない心」 「心の強さ」

だと思うのです。

仮説構築の技術(9) 〜 総括まとめ  2009年03月30日
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仮説構築の技術(2) 〜そもそも仮説とは何か?  2009年03月17日
仮説構築の技術(1) 〜なぜ仮説思考が必要か?〜  2009年03月13日


株式会社シナプス 代表取締役 家弓正彦




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