マーケティングカレッジの受講生の方から、
「紳竜の研究」というDVDをお借りしました。
結構、売れているみたいですね。
紳助曰く、「何をしたら売れるか?考えた」。
彼は、本当に徹底的に考え抜いたようです。
その結果、彼は自分独自の漫才理論を
「教科書」として作りあげたそうです。
しかも、それらは極めて戦略的に考えられていることに驚かされます。
昨今もお笑いは売れていますが、
その原点となった紳竜の戦略論を紐解いてみましょう。
■ 漫才にもSWOT分析?
彼は、それを「XY理論」と呼び、
若手芸人に対してアドバイスしています。
世の中で売れているヒトを片っぱしから見て、徹底分析せよ、、、と。
そして、お笑いのトレンドを研究する、今は何が売れるのか?
これを彼は「Y」と呼んでいます。
これはまさにOpportunity(機会)分析ですね。
そして、自分にできることを考える、これが「X」。
ちゃんと自分ができること、自分がやるべきことを考えて、
それを世の中のお笑いのトレンドにのせる。
この2つを考えて、自分がやるべき漫才を考えなさい、、、ということですね。
これ、要は「SWOT分析」ですね。
ま、正確には「S」と「O」の分析ですが、、、
しかし、漫才にこんな論理性があるとは驚かされました。
そして、彼は一発屋はこの公式がわかっていないんだと言っています。
ビジネスも、運よくヒットすることはあるかもしれませんが、
この勝ちパターンを見極めないと、持続的な成長はありえませんよね。
■ 斬新なターゲティング戦略
さらに、紳竜はイノベーションを起こします。
それまでの漫才は「赤ちゃんからお年寄りまで楽しめる」ことを
目指すのが常識だったようです。
当時、音楽業界はすでに顧客をセグメント化していたのを見て、
「お笑いも必ず細分化が必要になる」と確信したそうです。
一流のマーケターですね。
その結果、紳竜は、「20〜35歳の男性」にターゲットを絞りました。
今考えれば、当たり前かもしれませんが、当時は革命だったでしょうね。
■ 紳竜のポジショニング戦略
しかし、当時有能な漫才師がたくさんいました。
巨人阪神は正統派、さんまは天性の明るさを持つスター。
彼らを見て、「全くかなわない」と思ったそうです。
そこで採った戦略が、「不良」というポジショニング。
しかも、怖そうなワルが弱ければ面白いはず。
強い
|
不良 −−+−− 善良
|
弱い
というかんじのポジショニングマップを描けそうですね。(^^)
当時のお笑いのボケ役スターをマッピングするなら、
・善良/強い = 洋七
・善良/弱い = 阪神
・不良/強い = たけし
・不良/弱い = 紳助
てな具合でしょうか?
紳竜は見事にOnly Oneのポジションを見出しましたね。
■ 漫才理論のブレイクスルー
彼は、デビュー当時から尊敬するB&Bの洋七のシステムをパクったと言っています。
洋七は先輩から
「おまえは滑舌が良いから、ハイテンポで喋ったらどうだ?」と
アドバイスされたそうです。
洋七を崇拝していた紳助は徹底的に洋七の漫才を研究したとのこと。
あのテンポの速い「8ビート漫才」はその結果生まれたんですね。
漫才の世界でも「ベンチマーキング」は有効だったわけですよ。
それは、漫才のセオリーを完全に無視するもので、
観客に考える隙を与えないテンポで喋りまくるスタイルは
漫才の技術革新、イノベーションと言えそうです。
これが、彼らの御笑いを支える「コアコンピタンス」ですね。
■ 戦略的シナリオづくり
彼は、「M1グランプリには勝利の法則がある」と言う。
M1の審査員は、数多くの漫才を見続けています。
したがって、当然飽きが来るんだそうですね。ま、それは無理もない、、、(笑)
で、重要なのが、インパクト。
しかし、最初からきれいなストーリーを作ろうとすると、
納得感は得られるけど、インパクトは出ない。
インパクトを出すためには、、、
2分(M1予選の制限時間)の漫才なら4つのネタがあればよい。
その4つのネタを考えるのに、
(1) まず、メインテーマを決める
(2) そして、テーマに関わるネタを15個考える
(3) そのなかのインパクトあるネタBest4を決める
(4) その4つのネタを無理やり組み合わせて流れを作る
というプロセスでストーリーを組み立てるそうな、、、
大衆は誰も漫才のストーリーを楽しもうなんて思っていませんよね。
あくまで漫才の主役は「ネタ」にあるわけで、
結局、ストーリーはネタを披露するための演出に過ぎないわけですね。
■ プレゼンシナリオ
そして、全体のシナリオとして気をつけているのは、
最後の30秒の盛り上がり。後半に盛り上げるのが鉄則だと、、、
これも、言われてみれば当然なんですが、
そのために、最初の1分間は捨てても良いと言い切っています。
1分でキャラづけをして、すべては最後の30秒のために構成する。
ビジネスプレゼンにも相通ずるものがありますね〜
■ 終わりを感じた一瞬
ダウンタウンを見て「終わったなぁ」と思った。
やっていることは自分たちと同じ。それを遅いテンポにした新しい漫才。
あまりに完成度が高かったと紳助は回想しています。
竜介はいつも「俺は紳助の第一号ファンだから、、、」と言っていたそうです。
そんな竜介も、その後49歳にて亡くなってしまいました。
生前、50歳を機に「1日だけ紳竜を復活させよう」と話していたそうです。
残念ながら、漫才に多くのイノベーションを起こした紳竜を
再び見ることはできなくなってしまいました。
しかし、漫才界に残した足跡は永遠ですね。
株式会社シナプス 代表取締役 家弓正彦
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コメント
コメント一覧
“はんにゃ”しかり、“フルーツポンチ”しかり“オードリー”しかり。
阪神巨人は年代性別を超えてオールマイティに。
たけしは若い男性からチョイ悪オヤジくらいまで。
紳助は若いツッパリやヤンキー相手に。
で、前出のはんにゃやオードリーは「20代前後〜35歳くらいまでのF1層」を狙ったお笑いなんでしょうね。
この層のしゃべり方や興味があることを事前にサーチしてコントの中に上手に組み入れ、身近な笑いをテーマに意識してやっているような気がします。
確かにそう考えると「顧客のセグメント化」になっています。。。
昔のお笑いと今のお笑いで大きく違っていること!
●イケメン戦略
って絶対あると思います。
昔は容姿がユニークだったり、特徴があった方が笑いに向いているようでしたが、最近は少なくても2人組みならどちらかがイケメン!
これが女性の人気にもつながっているような気がします。
オリラジはどちらも若く今時の若者(年齢がばれますね)ですし、チュートリアルもはんにゃもどちらかがイケメンです。
●仮面ライダー戦略
仮面ライダーが子供向けのテレビ番組から、若いお母様をターゲットにした番組に変えてから一気にブレークしました。
ここでも“イケメン戦略”は使われています。
物語そのものも決して子供が見ても理解出来ないような難解な内容になっていて、でもCGなどを使ったり格好いいところは昔ながら。ここで子供の目を引かせます。
つまり、休日の朝にテレビを独占している子供とそのお母さんの両方をターゲティングして番組構成をしている仮面ライダーと最近のお笑いブームは似ているような気がします。
こじつけですかね(笑)
コメントありがとうございます。
> この層のしゃべり方や興味があることを事前にサーチしてコントの中に上手に組み入れ、身近な笑いをテーマに意識してやっているような気がします。
おぉ、そんなことまでやってるんですか!
こりゃ、お笑いの世界にも「マーケティングリサーチ」は
売れるかもしれませんね。(笑)
Kay
確かにその通りですね。
以前より、お笑いタレントが「アイドル化」しているようです。
そういう意味で、プロダクションもルックスという評価軸を
考えているんでしょうかね?
また、ある程度お笑いで人気が出ると、
役者の仕事にもチャレンジしているタレントも多いですよね。
これも、以前より増えているような、、、
もっとも、「演じる」ことにかけては、
長年トレーニングを積んできているでしょうから、
当然、役者としての基礎スキルも備えているんでしょうけど、、、
「アイドル化」という意味では、女子アナもその傾向が顕著ですね。
Kay