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来る2009年2月22日は第81回アカデミー賞の授賞式ですね。
一人の映画ファンとして、とても楽しみにしています。

このアカデミー賞は映画界最大の祭典とも言える大イベントですが、
その歴史は1929年にさかのぼります。
 【参考】アカデミー賞ヒストリー

アカデミー賞が映画産業にもたらした功罪について考えてみました。


■ アカデミー賞の歴史

1929年と言えば、まさに「世界恐慌」の年ですよね。
ま、これは偶然ともいえるでしょうが、
1920年代に急成長した映画産業は、はやり不況に強く、
現代風に言えば「安近短レジャー」として、動員が増えたそうですよ。
先日のブログでも紹介したように、オリエンタルランドが過去最高売上を
記録したようですが、今も昔も同じですね。

ま、結局、その後1930年代初頭には、映画産業も苦境に喘ぐようですが、、、


しかし、まさに映画産業の絶頂期にアカデミー賞は企画されたようです。
このネタをブログに書こうと思ったのも、
「映画産業として、市場拡大戦略を狙ったのではないか?」
という仮説があったからなんです。

しかし、、、

事実情報を紐解いてみると、当時映画産業のドンであったMGMの
ルイス・B・メイヤーが組合対策として作られたものだそうで、、、

それが分かった瞬間、「なんだ、、、仮説は空振りか、、、」と
ガッカリしたのですが、当初の狙いはさておき、実質的にアカデミー賞が果たした
映画産業におけるマーケティング効果は絶大なものがあったと思うのですよ。
そして、実際にマーケティング戦略の定石を実行しているところは、
特筆すべきだと、気を取り直して記事を書くことにしました。(汗)


■ アカデミー賞に見る戦略定石(1)

一般に、導入期の戦略としては「市場拡大」を戦略目標とするのが定石です。
当時の映画産業は、すでに成長期に入っていたとも考えられますが、
まだまだ、産業としてはこれからの産業として鼻息は荒かったでしょうね。
そんな中で、華やかな映画界を世に知らしめ、注目を浴びる存在にするには、
アカデミー賞のような大イベントを戦略的プロモーションとして
展開する意義は大きかったに違いありません。

【参考】プロダクトライフサイクルの戦略目標定石
 ・導入期:市場拡大
 ・成長期:シェア拡大
 ・成熟期:シェア維持/利益最大化
 ・衰退期:生産性の向上/刈り取り

市場全体を活性化するためには、業界を挙げての取り組みが必要です。
小さな「企業対企業」の個別バトルをしている場合ではありません。
ブルーレイ対HD-DVDなどの規格競争などをしていては、
市場活性化を妨げてしまうわけですな。(^^)


■ アカデミー賞に見る戦略城跡(2)

そんな導入期に重要な役割を果たすのはリーダーの存在です。
実際に、アカデミー賞を牽引したのは創設者メイヤーが
経営するMGMだったと考えられます。
リーダーは、市場拡大の恩恵を最も享受する存在なわけですね。

【参考】業界ポジションによる戦略定石
 ・リーダー   :市場拡大、全方位戦略、同質化、非価格競争
 ・チャレンジャー:リーダーとの差別化
 ・フォロワー  :模倣戦略
 ・ニッチャー  :ミニリーダー戦略

本来の目的は組合対策だったかもしれませんが、
実質的にアカデミー賞はハリウッドのメジャースタジオにとって、
とても重要な市場拡大を促進するイベントと言えそうですね。


■ 市場原理に市場は熱狂する

しかし、しかし、、、

MGMが音頭をとったということは、選考基準が歪むリスクが残ります。
現実に、初期のアカデミー賞ノミネート、受賞の実績を見ると、
圧倒的にMGM作品が多いのも事実なんです。

それに対して、当時の映画人はボイコットなどで猛然と抗議を行い、
徐々に透明な選考を目指していったそうな、、、

真に映画市場を活性化するために、透明な競争原理を導入できたのは
当時の映画人のリーダーシップの大きな功績ですね。

マーケティングは市場原理に立脚しています。
顧客からの支持がなければ、必然的に市場から排除されます。
そんな原理に立つことのできたアカデミー賞だからこそ、
今もなお存続しているに違いありません。

正当な選考だからこそ、顧客は興奮する。
本当に良い作品が表彰されるから、顧客は注目する。
あくまで顧客は、真に価値ある情報提供に共感するわけです。


株式会社シナプス 代表取締役 家弓正彦