前回のエントリーで、
VOC事業開発メソッドのアプローチをご紹介しました。
今回はそのうち最初のフェーズとなるキックオフフェーズについて
ご説明をいたします。


新規事業開発に関わるプロジェクトでは、
最初に取り組むべきことが3つあります。

まず新規事業の「コンセプト」を決めること。
つまりどのような新規事業を創りたいのかという指針を明確にします。
それとともに「プロジェクトチーム」を編成します。
特に、どのようなメンバーで構成するかは重要な意思決定ですね。
最後に、社内にアナウンスして、この活動をオーソライズすること。


キックオフフェーズ


以下、ひとつずつ説明していきましょう。


(1)コンセプト構築

新規事業開発にあたっては、
まず期待する新規事業の定義を明確にしなければなりません。
「儲かれば何でもよい」というわけではないはずです。

企業理念やビジョン、戦略によって
どのような領域で成長を遂げていきたいかが描かれていると思います。

トップマネジメントとの徹底したディスカッションをもとに、
新規事業開発の指針を定めることになります。

意思決定のポイントは以下の通り。

a)フィールド定義
新規事業といっても、どんな市場でも、
どんな事業内容でも構わないというわけではないでしょう。
全社戦略として自社の事業ドメインをどう定義づけているのか?
今後伸ばしたい事業分野はどこか?といった視点で
フィールド(主戦場)を決めるべきでしょう。

こういった基本戦略が未確立なら、そこから着手する必要があります。

b)事業開発の目的
多角化には様々な目的が考えられます。
既存事業が成熟期を迎えているので
「新たな成長機会」を獲得したいということかもしれません。

あるいは現在の事業の柱に加えて二本目の柱を構築して
「経営の安定化」を図りたいということかもしれません。

そもそも今何のために新規事業が必要なのか?
自社を取り巻く事業環境などを整理・分析して、
「今、新規事業が必要である必然性」を明確にしておきたいところです。

c)事業要件定義
経営トップの立場としては新規事業に対して様々な期待があるでしょう。
そもそもどのような事業を検討しなければならないのか?
以下のガイドラインを参考として、新規事業の目標を定めましょう。

・経営期待成果(売上、利益など)
全社の経営インパクトは考慮する必要があるでしょう。
どれくらいの事業規模を期待したいのか?
事業規模より収益力なのか?
検討すべき事業の事業成果目標を明確化しておきましょう。

・期待定性要因(変革レベル、シナジーなど)
定性的な目標も必要です。
現有リソースのシナジーを重視して、
既存事業の周辺の事業開発を期待するケースもあります。
逆に、現業からぶっ飛んだイノベーションを求めるケースもあります。
それぞれの企業の戦略やカルチャーにもよりますね。

・時間軸要件(ローンチ、黒字転換、累損解消など)
一般的な事業会社で見られる傾向として、
 「ローンチ」(ex.3年以内にローンチできること)
 「黒字転換」(ex.ローンチ後3年以内に黒字化)
 「累損解消」(ex.ローンチ後5年で累損解消)
などといった時間軸で要件付けしているケースが多いです。


(2)プロジェクト編成

シナプスが提供するプログラムは社内にプロジェクトチームを組成していただき、そこで新規事業開発の提言を作成します。新規事業を立ち上げるからには、やはり社員自らが考え、検討し、情報収集、意思決定をするというプロセスに取り組むことが重要なんです。自らコミットして作り上げた新規事業案には思い入れが生まれますよね。それがその後の立ち上げのアクションの原動力になるはずです。
その上でプロジェクトメンバーを選定する必要があります。プロジェクトメンバーにはどのような要件が必要で、どのようなチームを組成するべきでしょうか?

(a)チーム特性
チーム特性として重要なのは「多様性」です。様々な視点からアイディア抽出〜検討〜評価をしなければならないので、個々人の属性、個性、スキルなど多様なメンバー編成が望ましいのです。下記を参考に多様なメンバーを加えたいところです。
 ・職種(開発、営業、管理など)
 ・事業領域(BtoB、BtoC、業種業態など)
 ・役職(マネジメント視点、現場視点など)

(b)メンバー特性
・「動機」
メンバーに共通して求められる必要条件はそれほど多くはありません。唯一挙げておきたい要件は「新規事業の必要性を痛感していること」あるいは「新規事業を考えたいと思っていること」でしょうか。要するに新規事業開発の取り組みに心から前向きに取り組んでいただけるということ。動機づけはとても重要です。
・「影響力」
それに加えて、あるとベターなのは「周囲のメンバーや組織への影響力」を持っていること。新規事業開発〜立ち上げには様々な部門部署の協力を取り付けながら変革を起こしていくことが必要です。そんな時にこの影響力は武器となり、変革のスピードを上げてくれます。

(c)チームビルディング
チームが組成できたら、是非キックオフパーティをやろう!お互いの想いを共有し、コミュニケーションの基盤を一日も早く構築することは想像以上に重要なことです。


(3)社内オーソライズ

そして、この新規事業開発プロジェクトの活動をオフィシャルに社内およびメンバーの職場に告知すること。知る人ぞ知るアンダーグラウンドな活動にしてはなりません。メンバーには会社の将来を担う重要なプロジェクトに参画をしているという誇りをもって堂々と活動してもらいたいところです。

(a)社内広報
キックオフ時に限らず都度プロジェクトの進捗状況など社内に広報していきましょう。関連各部署などにも十分認知してもらい、必要に応じて協力をしてもらえる環境を整えたいところです。

(b)職場の巻き込み
時々起こるコンフリクトが、プロジェクト活動と職場の現業との板挟みです。当然プロジェクトメンバーには負荷がかかるので、職場の協力体制が必要です。メンバーの上司にはもちろんのこと、職場全体の理解を促したいところです。



◆まとめ

今回はキックオフフェーズの内容について説明してきました。
このようなプロジェクトでスタートは重要です。綿密な計画と大胆な行動で初速を上げてスタートを切りましょう。

株式会社シナプス 代表取締役 家弓正彦