シナプスでは「VOC(Voice Of Customer)事業開発」というメソッドを用いた新規事業開発に関わるコンサルティングを提供しています。本稿では、新規事業開発のプロセスをできるだけ詳細に解説していきます。まず初回として「VOC事業開発」の考え方についてまとめておきます。
イノベーションに変革にVOCは必要ないのか?
顧客の声、顧客ニーズがビジネスの上でとても重要であることは、今さら言うまでもありません。それは当然新規事業開発にあたっても重要な情報となるはずです。しかし、一方では「イノベーティブな新規事業は顧客の声からは生まれない」という考え方もあります。つまり顧客自身も気づいていない潜在下にあるニーズに応えてこそ革新的なビジネスチャンスであると、、、
では新規事業開発においてVOCには価値がないのでしょうか?確かに顧客が声にして語っている欲求には、すでに他社から商品サービスが提供されていることも多いでしょう。しかし、重要なことは顧客を徹底理解することにあると思うのです。
顧客の現状(AsIs)を理解したうえで、その顧客がより満たされた将来像(ToBe)を描く。そのギャップが顧客の抱える課題であり、本質的ニーズなんです。人間の本質欲求に根ざしたユニークなToBeが描かれれば、とても革新的なビジネスモデルが描けるかもしれません。
そのためにも、愚直にVOCに徹底的に耳を傾け、そこから顧客がおかれている現状を把握、理解することが求められます。顧客の現状を理解し尽くすことによってはじめて顧客の将来像を描けるのだと思います。
あと出しじゃんけん型新規事業
しかし、世の中で誰ひとり思いつかなかったビジネスだけが新規事業ではありません。自社にとって成長をもたらす新しい事業には積極的に取り組む意義があるはずです。すでに他社が取り組んでいても、十分に勝算があるなら果敢に後発参入するべきです。これを「後出しじゃんけん型新規事業」と呼んでいます。
その場合、競合となる先行企業のソリューションを徹底研究することが必要ですよね。それを最も理解しているのは誰だと思いますか?そうです。顧客です。そのソリューションを利用している顧客がどんな時、どのように使用し、何を感じているのか?そこに「不」はないのか?その現実をしっかり理解するためにも改めてVOCに徹底的に耳を傾けることになるはずです。
ヒアリング活動のポイント
VOCを把握する行為が顧客ヒアリングです。このヒアリングの量と質によって新規事業開発の品質が決まると言っても過言ではありません。しかしVOCの量と質を確保することは意外と難しいものです。
(1)100人の顧客の声を聴く
現代社会において、顧客は多様化しています。様々な価値観を持ち、個別の事情があり、顧客の声は様々です。ゆえにできるだけ多くの顧客の現実を知っておきたいところです。ところが意外と人は初対面の人と話をすることに抵抗があり、フットワークが重くなりがちです。
初動のフットワークを軽くするためには、強制力を持ってメンバーを動かさねばなりません。アタックリストを作り、担当分担をし、誰が(Who)いつまでに(When)何をするか(What)を明確にしたアクションプランを策定し、その進捗管理をして行動促進していきましょう。
対象となる商品やサービス特性にもよりますが、100人のVOCを集めたいところです。
(2)質の高い仮説検証型ヒアリング
ひとことで「顧客の声」と言っても、表面的な言葉を聞いているだけでは得るものは少ないでしょう。VOCの行間に潜んでいる現場で起こっている現実、使用者の感情、背景となる事業環境など、様々な視点から積極的に洞察することが求められます。私はいつもプロジェクトメンバーの皆さんに「顧客の現場を3D映像で再生できるくらい赤裸々に現実を把握しましょう」と叱咤激励しています。
そのためには高度なヒアリングスキルも必要となるので、ヒアリングに関わるレクチャー、トレーニングも必要となります。ニーズヒアリングに関わるトレーニングプログラムはココを参照してください。
(http://cyber-synapse.com/training/sales_person/needs_hearring.html)
ここで重要なポイントを一つ挙げるとすれば、ヒアリングにあたって必ず仮説を立てることにあります。現実がわからないからヒアリングをするわけですが、それでも今わかる範囲で仮説を立て、それをヒアリングで検証するというスタンスが不可欠です。
まとめ
(1) VOCはすべてのビジネスの原点
(2) イノベーティブな新規事業にもVOCによる現実把握が不可欠
(3) あと出しじゃんけん型新規事業ではVOCで競合把握すべし
(4) 量はダイジ!100人のVOCを集めよう
(5) ヒアリングの質を上げるには事前に仮説を磨くこと
以降のエントリーでVOC事業開発メソッドの具体的アプローチをご紹介してまいります。
株式会社シナプス 代表取締役 家弓正彦
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