〜 研修設計の勘どころ 〜
厚生労働省が平成26年度に行った「能力開発基本調査」によれば(※)、
「人材育成について問題がある」と感じている事業所は、全体の75.9%で
あることがわかりました。
その原因として
「指導する人材が不足している」(52.2%)、
「人材育成を行う時間がない」(48.8%)
などの回答が目立っています。
調査結果からもわかるように、昨今の企業内における人材育成は、
適切に指導できる人材が足りなかったり、指導時間を確保していなかったり
するため上手に行うことができていません。
そこで、効果的な人材育成のために研修を活用することができます。
研修を考えるときは、研修プログラムのコンセプトをどこに置くべきか、
をしっかりと設定する必要があります。そこで今回は、コンセプトの
要素である「ターゲットと目的」「ゴール設定」について説明します。
※参考:http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000079873.html
「ターゲット」と「目的」を明確にする
さまざまな立場の人が混ざりやすい研修では、
とくに育成したいターゲット層と「ターゲットにどうなって欲しいのか」
という基本的な目的を、しっかりと決める必要があります。
なぜなら、ターゲットと目的が明確になることで、
何をどこまで教えるべきかという指導の範囲がわかりやすく、
ターゲットの目線に合わせた指導ができるからです。
ターゲット層と目的には、さまざまなものがあります。
たとえば、研修目的としてよく挙げられるのは
「ボトムの底上げ」や「共通言語化」です。
マーケティングプランを検討するとき、
関係者間で共通のマーケティング用語を使って会話できると、
スピード感を持ってビジネスが進みます。
そこで「マーケティング」や「論理思考」など、
お互いに言葉の意味を理解できるよう、
共通言語を持つための研修が開かれます。
またマーケティングの研修では、
エバンジェリストを輩出することを目的として、
リーダー職の社員をターゲットとする場合があります。
エバンジェリスト(伝道者)とは、
いわゆる他のメンバーに的確な指導を行える人のことです。
とくに経験の少ない部下は、正しいやり方がわからぬまま、
マーケティングプランを構築していることがあります。
そのとき、的確にフィードバックできる指導者がいなければ、
部下は育たないでしょう。
そこで、マーケティングの考え方を社内に啓蒙できるリーダーを
つくる目的で研修を行うのです。
このように「自社の課題とは何か」を考えながら、
ターゲット層と目的を決める必要があります。
ゴールの作り方
研修で、何をどこまで教えるべきなのかを絞り込むためには、
ゴールを設定することが必要です。
組織の課題を具体的に捉えるゴールづくりは、「AsIs/ToBe」
というフレームワークで考えていきます。
まず、「AsIs(現状)」として自社にどのような課題があるのかを認識し、
それから、「ToBe(目標)」として研修後に目指す姿を設定します。
当社(シナプス)では、「AsIs/ToBe」を「意識」「行動」「成果」
という3つの切り口で、独自に捉えています。
そもそも、ビジネスを行う以上は成果が求められます。
しかし、成果を出すための研修は即効性があるものではなく、
繰り返しトレーニングを積むことで効果を発揮する、
いわば漢方薬のようなものなのです。
また成果を確認しようにも、はっきりと数字に表れないケースも存在します。
そこで、「行動」や「意識」をゴールとして設定することが必要です。
そして、意識の変化をクリアしてから、次に行動を変えていきます。
その行動の結果として、成果がだんだんと現れてくるようなイメージを持つのです。
現実的に、「意識」→「行動」→「成果」という順で変化が起こっていきます。
シナプス独自の「AsIs/ToBe」(例)
営業パーソンのケースを例にして、シナプス独自の「AsIs/ToBe」の
切り口をイメージしてみましょう(※)。
たとえば、「提案コンペでの勝率が低い」というAsIs(現状)があります。
そこで、「提案品質を高め、コンペでの勝率を上げること」を
ToBe(目標)としました。
さらには、「既存クライアントに能動的な持ち込み提案を行い、
潜在化しているニーズを案件化すること」
が目標です。
これが「成果」のAsIs/ToBeとなります。
しかし、上記のことを実現しようとするとき、
「顧客の言葉に振り回されてニーズの把握ができない」という
AsIs(現状)に直面します。
よってToBe(目標)として、
「設定した仮説をもとに積極的に顧客へのヒアリング」を行います。
そのうえで、顧客のニーズにマッチしたトータルソリューションを
提供することが求められます。これが「行動」のAsIs/ToBeとなるのです。
さらに「意識」のAsIs/ToBeとして、AsIs(現状)では
「顧客の表面的な欲求に応えるだけで精一杯」かもしれません。
このとき、それ以上の深い洞察が難しくなります。
そこでToBe(目標)として、「顧客の本質的なニーズを理解すること」
を設定します。
さらには、組織全体で「本質的なニーズ」という言葉が、
同じ概念で共有されていることが目標です。
以上のように、「成果」「行動」「意識」のそれぞれの段階で
AsIs/ToBeを考えることによって、研修のコンセプトとなります。
そして研修を作りこむときに、どのようなプログラムを組むべきなのか、
という指針となってくれるのです。
株式会社シナプス 代表取締役 家弓正彦
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