目標が動機づけには重要な役割を果たすというお話をしてきました。
ロックは目標設定理論で、「明確かつ高い目標を課すこと」としました。
ただ目標未達を繰り返すと「学習性無力感」に陥ることを留意しなければなりません。

そこで「目標達成」あるいは「報酬」に対する期待がモチベーションには
重要な役割を果たすとしたのが、ヴルームの「期待理論」です。

(6)期待理論(ヴルーム)

ヴルームが提唱したのは、動機は「期待確率」と「報酬魅力」によって
決定するとした「期待理論」です。

「期待確率」とは、報酬が得られるであろう確率を意味します。
目標が高すぎて「とても達成できない」と感じられてしまえば、
期待確率は下がり、モチベーションには繋がりにくいことになります。

また「報酬魅力」とは、本人にとって報酬の主観的な価値を意味します。
仮に目標達成したとしても、その見返りとなる金銭報酬が少なければ、
あまり駆り立てられるようなモチベーションには繋がりませんよね。

期待理論1


一点注意したいのは、ここで使っている報酬は広い意味での報酬で、
金銭報酬以外にも、達成感、他者からの承認など、
自分に返ってくるメリットと考えるとよいでしょう。

したがって、金銭報酬は魅力的なものでなくても、
これまで誰一人達成したことのない困難な目標をクリアできれば、
自分は「他者から尊敬される」「自己の達成感に浸れる」といった
魅力的な報酬を得られるかもしれません。

期待は心の持ちよう

これまでの説明の中で、一見矛盾するように見えるのは、
高い目標設定がなされれば、
「とても達成できない」と感じられ、期待確率下がる動機下がる
という結果がもたらされる可能性もあり、同時に、
「困難だからこそ燃える」と感じれば、報酬魅力上がる動機上がる
という結果にもつながるかもしれないということです。

期待理論2


これは、高い目標を心の中でどのように捉えるかの違いですね。
つまり、動機は心の持ちようで大きく変わるということです。

マネジメントへの示唆

では、マネジメントの立場にとってはどのような示唆があるでしょう。

「とても達成できない」というメンバーに、
「困難だからこそ燃えろ!」と叱咤激励すればよいものでしょうか?
そう言われたからと言って、ヒトの性格はそう簡単に変わりませんよね?

一朝一夕にヒトの価値観は変わらないと思います。
しかし、メンバーには様々な動機づけ要因があるはずです。

「期待確率」にのみ目を奪われるのではなく、
「報酬魅力」の側面にも気づいてもらうコミュニケーションを
丹念に繰り返していくということになるのだと思います。
前述のように「尊厳欲求」に訴えかけたり、
「仲間との関係性(社会的欲求)」を刺激したりしてみましょう。
 ※マズローの5段階欲求説参照のこと

このようにマネジメントには、きめ細かく中長期的なコミュニケーションに
取り組んでいくことが求められているのではないでしょうか?


今回は「期待理論」をご紹介しました。
結果として、目標が達成され、期待通りの報酬が得られること、
これがモチベーションに繋がることは間違いありません。

しかし、モチベーションを強化するにはそれだけで十分でしょうか?
次回は、もう一つの側面を説明する「公平理論」をご紹介します。


株式会社シナプス 代表取締役 家弓正彦
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