昨年注目されたハーバード大学の人気講座、サンデル教授の「白熱教室」。
正月にNHKで全12回を放映していたので、関心を持って見ていました。
ま、私は政治哲学に興味があったわけではなく、
およそ1000人が受講するというサンデル教授の
講師ファシリテーションの技術を学びたかったんですが。。。
結論として、非常に面白かったです。
講師ファシリテーションもさることながら、
結局私もサンデル教授のファシリテーションに見事に惹き込まれ、
政治哲学に興味関心を持ってしまうほどでした。
ここでは、サンデル教授の講師としてのスキルについて、
自分なりの学びをまとめておきたいと思います。
基本構成
サンデル教授の講義シナリオは以下の流れをとっています。エピソード > インタラクション > 古典的名著の思想紹介
全体を通じてこの流れは一貫しています。
これが彼の講義フォーマットなんでしょうね。
エピソード
サンデル教授の講義の醍醐味はこの「エピソード」にありそうです。実に興味関心を持たせるエピソードを紹介してくれます。
<エピソード1>
あなたは路面電車の運転手だ。しかし、ブレーキが故障。
5人の命を助けるために、1人を殺せるか?
<エピソード2>
19世紀イギリスの実話。難破した船の4人の乗組員。
3人が生き延びるために1人を殺した事件。
<エピソード3>
フィリップモリスが行ったチェコでの費用便益分析。
人々が早死にすると医療費の節約にもつながると、、、
<エピソード4>
スティーブジョブスから貧しいものに富を再配分する課税法。
これは正義か?それとも強制労働か?
<エピソード5>
「ハムレット」、アニメ「シンプソンズ」などの映像を見せた上で、、、
好きなのはどれか?崇高な経験となるのはどれか?
どれもが自分ごとに当てはめて考えてみると、非常に悩ましく、
かつ、興味深いエピソードばかりです。
このエピソードが受講生達の気持ちを捉えるんですよね。
インタラクション
このエピソード紹介から、学生たちに主張を発言させます。さすがハーバードの学生たち。自分の主張を堂々とプレゼンしています。
その主張を聴いたサンデル教授は、
さらに主張の根拠を聴いたり、その主張を掘り下げて確認したりしています。
ここにサンデル教授と学生の間でのインタラクションが発生します。
そして、必ずサンデル教授は「学生の主張を否定しない」んです。
学生の主張におかしいところがあれば、その矛盾を考えさせるように問いかける。
問いかけられると、学生は自らの主張の矛盾に気づき、
なぜそう思ったのかをさらに掘り下げて考える、、、という流れですね。
そうやって学生は、自分でも気づかなかった新たな自分を発見していきます。
反論プロモーション
このあと必ず行っているのが、「反論はないかな?」という問いかけ。ここでもしっかりハーバードの学生は反論をしかけています。
同様のインタラクションの後で、サンデル教授はさらに反論に対する反論を促します。
非常に上手いと感じたのは、この反論をディベート風に学生同士に任せるのではなく、
必ずサンデル教授が介在しているのです。
例えば、
「ジョンの意見に対して、マイケルはこう言っているけどどう思う?」
と言った具合。
これは一長一短あると思いますが、受講生1000人の講義において、
限られた時間で最大の学びを提供するためには、
議論の混乱を避け、対話をコントロールする必要があるということだと思いました。
そして、この一連の流れでサンデル教授は、
「モノゴトには唯一の真理は存在せず、様々な見方や考え方があること」
を伝えたいのでしょうね。
名著の思想を適用
そして、学生の主張を受け止めながら、「つまり君は功利主義の立場に立っているんだね?」
とか、
「君はリバタリアニズムには反対なんだね?」
といった具合に、古典的思想を適用することで、
学生に理解を促しているようです。
これは上手いですね。学生は自分の主張を通じて、
先達の思想を理解することになるわけですから、見事にハラ落ちするでしょう。
まとめると
サンデル教授のファシリテーションの特徴は、以下にあると感じました。- ユニークなエピソード
- 学生とのインタラクション(否定せず、問いかけ)
- 反論促進(対話のコントロール))
- 古典的思想の適用(気づき、ハラ落ち)
早速、ビジネススクールで「家弓正彦流白熱教室(?)」を実践してみたいと思います。
【参照】
下記にて、非常に詳しく「白熱教室」について書かれています。ご参考まで。
ハーバード大学:サンデル教授「 JUSTICE 」 当サイト独自のまとめ(白熱教室)
株式会社シナプス 代表取締役 家弓正彦
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コメント
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そうなんです。
少人数のファシリテーションとはまた異なる技が必要ですよね。
白熱教室には、いろいろ参考になる部分がありました。