宝塚歌劇団、、、
1914年の初公演以来、もうすぐ100年の歴史を持つエンタテイメントです。
先日、生まれて初めて宝塚歌劇団の公演を見てきました。
これまで、全くこの世界に足を踏み込む機会はありませんでしたが、
たまたま知人に誘われる機会に恵まれました。
おそらく自分の意思で行くことはないだろうし、
また、この100年も続くビジネスに対してとても興味を駆り立てられたんですね。
マーケティング視点で私なりに考えてみました。
マーケティング戦略を考える際、まずターゲティングが重要です!
宝塚のターゲットはもちろん女性が中心ですよね。
9割以上が女性と言っても良いのではないでしょうか?
しかし、ファンの方に聞くと、
そのなかでも時代の変化に応じてターゲットの変遷があるようです。
以前のターゲットは「中高年の主婦+女学生」だったようですが、
女性の社会進出、キャリアウーマン(お金を持つ独身女性)の出現によって、
「30〜40歳代の女性」を採り込んでいったようです。
演目も大人向けの内容が増え、公演時間も平日の「夕方」から「夜」に変更。
スターも、かつては男臭いタイプ(鳳蘭)か妖精タイプ(安奈淳)が
中心だったものが、ナチュラルタイプ(天海祐希)に変化したようです。
その結果、特に東京宝塚劇場では大成功と言えそうです。
チケットは全公演ほぼ100%売り切れ、
日本で一番チケットが入手困難な演劇に位置づけられるまでになっています。
逆に、その戦略の結果、周辺にオフィスが無くキャリアウーマンの少ない
宝塚大劇場では、本拠地なのにチケットの売れ行きが今ひとつだそうで、、、
宝塚の舞台に上がるには、宝塚音楽学校に入学する必要があります。
この合格が非常に難関で、入学希望者は各所の宝塚予備校(バレエ教室など)で、
早くから厳しいレッスンを受けてから受験しているようですね。
それを称して「東の東大・西の宝塚」と呼ばれるのは有名な話し。
音楽学校では2年間の間、声楽・バレエ・日舞など、劇団で必要な事柄について、
みっちりレッスンが組まれています。
それに加えて、礼儀作法やしつけには特に厳しいと言われ、
かつては「女士官学校」と呼ばれるほどだったそうです。
舞台に立つ前までの、受験〜音楽学校での体験が採用後のミスマッチを防ぎ、
劇団員の高いモチベーション、プライドの醸成につながっているんですね。
このES(従業員満足)が、CS(顧客満足)に結びついていると言えそうです。
ビジョナリーカンパニー2では、
飛躍する企業は「誰をバスに乗せるか」を重要視していると書かれています。納得。
宝塚は5つの組(花組、月組、雪組、星組、宙組)から構成されます。
各組では「スター制度」と呼ばれるユニークなしくみが運用されています。
つまり、主演は「トップスター」が常に演じます。
そして、準主役を演じる「二番手」、トップの相手役を務める「トップ娘役」。
この三人が中心となって作品が構成され、
常にこの三人にスポットライトがあたっているような印象です。
特に、後半のショーのフィナーレでは、
トップは自身の身体よりも大きい羽根を背負って、大階段を降りてきます。
何も分からない人でも、誰がトップなのかは一目瞭然ですね。
劇団マーケティングの最大の訴求ポイントは、このトップ3!
この3人を目玉として徹底的にファンに訴求している!
この3人がファンのハートをグリップしている?
ファンは、この3人に魅かれて講演に足を運ぶ?
もちろん中核をなす「訴求ポイント」は、この3人なんでしょうが、
実態はそんな単純な話ではないようです。
宝塚のオフィシャルファンクラブとしては「宝塚友の会」があります。
これはこれで重要な顧客囲い込み政策だと思うのですが、
もっと重要な役割を果たしているのが「私設ファンクラブ」のように感じました。
劇団員一人ひとりに「私設ファンクラブ」なるものが設立されているんですね。
「お茶会」というこのファンクラブの集いに参加すると、
劇団員が挨拶に来てくれる時もあるそうで、、、
一方、私設ファンクラブにも明確な規律があり、
入り出待ちのガードに参加、一般顧客に迷惑をかけない等のルールがあるようです。
スター制度によって、誰がトップの座にいるかが明確になります。
劇団員にしてみれば、その頂点に立つことが最終目標であり、
この私設ファンクラブのメンバーにとっても、
トップスターに育てていくという強いモチベーションが働くようです。
「あの大階段の真ん中に立たせてあげたい!」
いわゆるパトロン心理、タニマチの役割みたいなものですね。
そんなファンが若手劇団員一人ひとりにつき、
すそ野の広い「ロイヤル顧客」となって存在しているわけです。
となると、ファンの楽しみ方は「次世代のトップ」を探し、
新人の頃から、私設ファンクラブに入り、応援しつづけ、
その劇団員がトップに上り詰めると言う醍醐味でしょうね。
そのために、ファンは「入り待ち・出待ち」をして、
様々な劇団員チェックをすることもあるとのこと、、、
そうやって自分が発見した劇団員がスターにのし上がっていくのは、
確かにこの上ない喜びに繋がりそうです。
常に、宝塚ファンは若手劇団員にも目を向け、
次世代のトップスターを探し続けているのかもしれません。
ん?ここまで考えて、
これはどこかで耳にしたことがあるような、、、?
そうです!
AKB48のファン心理と同じじゃないか?
そんな気がするんですね!
AKB48も、チームA、チームK、チームBから構成され、
AKB選抜総選挙なども実施されて明確な上下関係をもったヒエラルキー組織となっています。
また、公式ファンクラブ「柱の会」に加えて、
やはり個人個人に私設ファンクラブが設立されていますね。
こちらの私設ファンクラブの活動実態はよくわかりませんが、
パトロン心理は通じるものがあるのではないでしょうか?
そういえば、AKBの有名なルール「恋愛禁止」も共通点でしたね〜!
こうやって比較してみると、
宝塚とAKBのマーケティングには実に共通点が多い!
いや、むしろ秋元康氏は、宝塚を徹底ベンチマークしたに違いない!
そんな結論に至ったのでありました。
(追伸)
私は、宝塚もAKBも、全く詳しくありません。
公開情報や一部の詳しい方からの情報をもとに書いています。
何か誤謬がありましたら、ファンの方にお詫びいたします。
ご指摘などコメントいただければ幸いです。汗
株式会社シナプス 代表取締役 家弓正彦
Follow me ! → http://twitter.com/Kayumi
1914年の初公演以来、もうすぐ100年の歴史を持つエンタテイメントです。
先日、生まれて初めて宝塚歌劇団の公演を見てきました。
これまで、全くこの世界に足を踏み込む機会はありませんでしたが、
たまたま知人に誘われる機会に恵まれました。
おそらく自分の意思で行くことはないだろうし、
また、この100年も続くビジネスに対してとても興味を駆り立てられたんですね。
マーケティング視点で私なりに考えてみました。
ターゲットは誰か?
マーケティング戦略を考える際、まずターゲティングが重要です!
宝塚のターゲットはもちろん女性が中心ですよね。
9割以上が女性と言っても良いのではないでしょうか?
しかし、ファンの方に聞くと、
そのなかでも時代の変化に応じてターゲットの変遷があるようです。
以前のターゲットは「中高年の主婦+女学生」だったようですが、
女性の社会進出、キャリアウーマン(お金を持つ独身女性)の出現によって、
「30〜40歳代の女性」を採り込んでいったようです。
演目も大人向けの内容が増え、公演時間も平日の「夕方」から「夜」に変更。
スターも、かつては男臭いタイプ(鳳蘭)か妖精タイプ(安奈淳)が
中心だったものが、ナチュラルタイプ(天海祐希)に変化したようです。
その結果、特に東京宝塚劇場では大成功と言えそうです。
チケットは全公演ほぼ100%売り切れ、
日本で一番チケットが入手困難な演劇に位置づけられるまでになっています。
逆に、その戦略の結果、周辺にオフィスが無くキャリアウーマンの少ない
宝塚大劇場では、本拠地なのにチケットの売れ行きが今ひとつだそうで、、、
誰をバスに乗せるか?
宝塚の舞台に上がるには、宝塚音楽学校に入学する必要があります。
この合格が非常に難関で、入学希望者は各所の宝塚予備校(バレエ教室など)で、
早くから厳しいレッスンを受けてから受験しているようですね。
それを称して「東の東大・西の宝塚」と呼ばれるのは有名な話し。
音楽学校では2年間の間、声楽・バレエ・日舞など、劇団で必要な事柄について、
みっちりレッスンが組まれています。
それに加えて、礼儀作法やしつけには特に厳しいと言われ、
かつては「女士官学校」と呼ばれるほどだったそうです。
舞台に立つ前までの、受験〜音楽学校での体験が採用後のミスマッチを防ぎ、
劇団員の高いモチベーション、プライドの醸成につながっているんですね。
このES(従業員満足)が、CS(顧客満足)に結びついていると言えそうです。
ビジョナリーカンパニー2では、
飛躍する企業は「誰をバスに乗せるか」を重要視していると書かれています。納得。
3人のスター
宝塚は5つの組(花組、月組、雪組、星組、宙組)から構成されます。
各組では「スター制度」と呼ばれるユニークなしくみが運用されています。
つまり、主演は「トップスター」が常に演じます。
そして、準主役を演じる「二番手」、トップの相手役を務める「トップ娘役」。
この三人が中心となって作品が構成され、
常にこの三人にスポットライトがあたっているような印象です。
特に、後半のショーのフィナーレでは、
トップは自身の身体よりも大きい羽根を背負って、大階段を降りてきます。
何も分からない人でも、誰がトップなのかは一目瞭然ですね。
劇団マーケティングの最大の訴求ポイントは、このトップ3!
この3人を目玉として徹底的にファンに訴求している!
この3人がファンのハートをグリップしている?
ファンは、この3人に魅かれて講演に足を運ぶ?
もちろん中核をなす「訴求ポイント」は、この3人なんでしょうが、
実態はそんな単純な話ではないようです。
ファンの心理はパトロン?
宝塚のオフィシャルファンクラブとしては「宝塚友の会」があります。
これはこれで重要な顧客囲い込み政策だと思うのですが、
もっと重要な役割を果たしているのが「私設ファンクラブ」のように感じました。
劇団員一人ひとりに「私設ファンクラブ」なるものが設立されているんですね。
「お茶会」というこのファンクラブの集いに参加すると、
劇団員が挨拶に来てくれる時もあるそうで、、、
一方、私設ファンクラブにも明確な規律があり、
入り出待ちのガードに参加、一般顧客に迷惑をかけない等のルールがあるようです。
スター制度によって、誰がトップの座にいるかが明確になります。
劇団員にしてみれば、その頂点に立つことが最終目標であり、
この私設ファンクラブのメンバーにとっても、
トップスターに育てていくという強いモチベーションが働くようです。
「あの大階段の真ん中に立たせてあげたい!」
いわゆるパトロン心理、タニマチの役割みたいなものですね。
そんなファンが若手劇団員一人ひとりにつき、
すそ野の広い「ロイヤル顧客」となって存在しているわけです。
次世代のトップスターを探せ?
となると、ファンの楽しみ方は「次世代のトップ」を探し、
新人の頃から、私設ファンクラブに入り、応援しつづけ、
その劇団員がトップに上り詰めると言う醍醐味でしょうね。
そのために、ファンは「入り待ち・出待ち」をして、
様々な劇団員チェックをすることもあるとのこと、、、
そうやって自分が発見した劇団員がスターにのし上がっていくのは、
確かにこの上ない喜びに繋がりそうです。
常に、宝塚ファンは若手劇団員にも目を向け、
次世代のトップスターを探し続けているのかもしれません。
どこかで聞いたような、、、?
ん?ここまで考えて、
これはどこかで耳にしたことがあるような、、、?
そうです!
AKB48のファン心理と同じじゃないか?
そんな気がするんですね!
AKB48も、チームA、チームK、チームBから構成され、
AKB選抜総選挙なども実施されて明確な上下関係をもったヒエラルキー組織となっています。
また、公式ファンクラブ「柱の会」に加えて、
やはり個人個人に私設ファンクラブが設立されていますね。
こちらの私設ファンクラブの活動実態はよくわかりませんが、
パトロン心理は通じるものがあるのではないでしょうか?
そういえば、AKBの有名なルール「恋愛禁止」も共通点でしたね〜!
こうやって比較してみると、
宝塚とAKBのマーケティングには実に共通点が多い!
いや、むしろ秋元康氏は、宝塚を徹底ベンチマークしたに違いない!
そんな結論に至ったのでありました。
(追伸)
私は、宝塚もAKBも、全く詳しくありません。
公開情報や一部の詳しい方からの情報をもとに書いています。
何か誤謬がありましたら、ファンの方にお詫びいたします。
ご指摘などコメントいただければ幸いです。汗
株式会社シナプス 代表取締役 家弓正彦
Follow me ! → http://twitter.com/Kayumi
コメント
コメント一覧
マーケティングの視点から見る宝塚、面白いですね。
AKBとの比較論、非常に興味深いです。
ファンに対するマーケティング戦略は、本当に類似点が多いですね。
違う部分は、従業員へのHRMシステムや組織の凝集性ですかね?
コメントありがとうございます。
とても貴重な体験をしました。
ジャニーズやEXILEにも通じるとの声が挙がっています。
また、続編でも書くかな、、、
ありがとうございます
選抜が厳しい選ばれし従業員の満足度
わかりやすいトップスターの見える化
スターを育てるオーナーシップを持った顧客の満足度
マーケティング的に見ても
サービスプロフィットチェーンとして
見てもなるほどでした
育てることが好きな深層心理を
ついているのでしょうか
顧客が従業員化してスターを育て
顧客が顧客を勧誘し
作品を作り上げている印象でした
コメントありがとうございます。
そうですね。
私も全くの未知の領域でしたが、
実際に目の当たりにすると、
実に多くの発見と気づきがありました。
Kay
ファンとスターの関係性は、まさしく述べられたとおりと思います。私は宝塚贔屓なので、AKBの出現当時にはいささか震撼したものでした
今度はぜひ、スター側の、宝塚音楽学校のこともご覧になられたら面白いのではないかと思い、コメントさしあげた次第です。
予科生(最下学年)の年齢構成は入学時点で16〜19才というバラつきがあるのですが、1学年上=本科生からの厳しい躾指導と、タイトスケジュールな学校生活を経て、一致団結していきます。そして1年後には、上級生と同様な指導役にならなくてはいけません。スキルアップとマネジメントを両立して伸びてゆく濃密な2年間も、宝塚歌劇の独特な人事制度の根幹になっていると思いますので
コメントありがとうございます。
宝塚ファンの方ですね!
宝塚音楽学校についても関心があったのですが、
やはりここが劇団員の育成プロセスとして重要な役割を担っていそうですね。
「スキルアップ」と「マネジメント」の両立ですか!
勉強になりました。どうもありがとうございます。
また何か追加情報があれば、是非ともよろしくお願いいたします。
Kay