企業経営には、多くの社会的リスクに直面することがあります。
製品トラブル、経営陣の不祥事、その他様々なリスクを抱えていますよね。
当然、企業はそれを「ルール」や「規約」などで防衛していますが、
そのリスクを完全に払しょくすることは不可能なわけですよ。

所詮、企業は人の活動によって成り立っています。
そして、人は過ちを犯すものなんです。
だから、企業は的確な危機管理の責任を果たしていかなければならないわけですね。

危機管理の好事例としては、松下電器産業(現パナソニック)が挙げられそうです。

2005年1月事故発生

松下電器製FF式石油暖房機による一酸化炭素中毒事故が起きました。
その後4月にかけて計3件の事故が起こったにもかかわらず、
その公表が4月になったことをマスコミは激しくバッシングしたようです。
当時、松下電器は自主回収作業を行っていたようですが、
その後11月に4件目の事故が発生し、経済産業省からリコール徹底の緊急命令を受けました。

松下電器は社会的な信頼を失い、大きなダメージを受けたように見受けられましたが、
その後の危機管理対応には目覚ましいものがあったと言われています。

徹底した危機管理対策

松下電器は当時の中村社長のリーダーシップのもと「FF市場対策本部」を立ち上げ、
対象約15万台を「最後の一台まで」全て回収するという方針を打ち出しました。

とにかくその時の活動は徹底していたようです。
対象機種を5万円で引き取るキャンペーンを展開、新聞やTVCMに50億円を支出、
急遽12月10日〜19日までの10日間はコマーシャルすべてを「回収告知CM」に差し替える。
いやぁ、徹底していますね!その間、他の商品の全てのCMがストップしたわけです。

また、社員が総出でガソリンスタンドや灯油販売店など6万店をローラー作戦で巡回、
社員自ら各家庭にチラシ配布142万枚、全国の全4900万世帯、事業所など1000か所、
6000万枚のDMを送付、街中各所に述べ32万枚のポスターが貼られたそうです。

この12月13日〜16日の間だけでも、動員された社員は6500人にのぼったと言われます。

市場からの評価は?

さすがに12月には一時的な業績ダメージがあったようですが、
この徹底した活動が功を奏して、同年度の売り上げ見込み8兆7200億円を
2月には8兆8400億円に上方修正するに至っています。
また、CM総合研究所の好感度ランキングでは、
この「謹告CM」は「企業姿勢にウソがない」という理由で2位と評価されました。
この結果が語るように、松下電器への社会的評価は
「反感」から「理解、協力」という風潮に変わっていったんですね〜。

松下電器は、対象機種の回収活動を5年経った今でも続けています。
現在も同社の公式ホームページでは謹告を掲載し、回収を呼び掛けているんです。

pana


危機管理に必要な3つのファクター

危機管理は、企業の重要な取り組みです。
前述の通り、リスクは発生することを前提として、
常日頃から対策を講じておく必要があるわけですね。

そこで、危機管理に必要な3つのファクターとして、
・リスク教育
・早期発見
・危機管理広報
 の視点から考えてみました。

リスク教育

まずは、常に一人ひとりの危機管理に対する意識啓発を図っておくことが必要ですね。
そもそもリスク要因は、トップから現場まで全ての社員に潜んでいるものですから、
そのリスクを低めるためには、全員の意識を高めておくことが不可欠なんです。
コンプライアンス、各種法的規制など、日ごろの社員に対する意識づけとともに、
必要な知識を習得する「リスク教育」を徹底することが望まれます。

早期発見

事前対応策を徹底しても、人為的なミスは起こります。
その場合、最も重要なことは「事態の早期発見」ですね。
起こってしまったリスクも、早期発見によって被害を最小化できるし、
早期に広報機能が働くことで外部対応策も綿密に計画できるはずです。

トラブルの早期発見をするために、リスク情報を素早く吸い上げるしくみを確立し、
それらを迅速に関連部署(特にトップ)に連携する情報ルートの明確化が必要です。

現場がなんとかトラブルの事実を内々で処理してしまおうという文化があるとすれば、
それが最大のリスクということになりますね!

危機管理広報

そして、社会に向けて適切に広報していくことが求められます。
危機管理広報活動における留意点をまとめておきましょう。

◆迅速な対応、発表

広報のタイミングは非常に重要な要素です。
社会的影響や市民感情などを考慮すれば、まずは問題を把握した段階で、
できるだけ迅速な対応とそれを公に発表することが求められます。

◆真摯に謝罪する

社会全体に迷惑をおかけしたことを真摯に謝罪する姿勢が必要ですね。
責任逃れや責任転嫁にも受け取られかねない対応をすることで企業としての姿勢が疑われ、
逆に市民感情を逆なでする結果に至ってしまった事例も数多くみられます。

◆事実を正しく公開する

また、事実情報が不明確なまま広報に臨むと、
「そもそもこの情報把握ができない企業だからこそ、こんなトラブルが起こるんだ」
という評価を下されかねませんよね。

前述の情報収集の仕組みをしっかり確立しておくことが企業の責任なんです。
事実と反する情報が流れてしまった場合、感情的に反論するのではなく、
きちんと事実情報を示し、正しく状況説明するスタンスをとることが必要です。

◆今後の対応策を明らかにする

そして最後に、今後の対応策を明確に示し、
責任ある企業としての姿勢を見せることが肝要ですね。
まだ十分な対応策を示せる段階でなければ、「今後の見通し」といったかたちでも構いません。
できるだけ情報開示することを心がけなければなりません。

まとめ

21世紀型の美しい企業は、社会的責任を積極的に果たしていく姿勢を持っているはずです。
危機管理、リスクマネジメントは、今後の企業にとって不可欠な取り組みですね。



株式会社シナプス 代表取締役 家弓正彦
Follow me ! → http://twitter.com/Kayumi