昨今、「CSR」という言葉はすっかり定着しましたね。
しかし、その本質を体現している企業はまだまだ少ないように感じます。
今日は、CSRソーシャルマーケティングについて考えてみたいと思います。

今更ではありますが、CSRとは「Corporate Social Responsibility」の略で、
企業の「社会的責任」と訳されています。

そもそも企業は設立されたその日から一社会市民として
社会的な責任が生じているわけですが、
企業が社会的責任を果たしていくことに対する要請は
この数年で特に強くなっている風潮にあると感じます。

今後の企業経営では、その要請に応えざるを得ない状況でしょうね。

そこで、美しい企業の理念、価値観について考えてみましょう。
まず、自然派化粧品で有名なザ・ボディショップの事例を見てみましょう。

ザ・ボディ・ショップの価値観(バリューズ)

同社は、企業理念であるミッションステートメントで自らの存在理由を
「社会と環境の変革を追求して、事業を行うこと」と明記しています。

つまり創業時から「社会に貢献しながら事業を行う」という志を持っているんですね。

そこで、ザ・ボシ・ショップの「Values」と呼ばれている5つの理念を紹介します。

(1)AGAINST ANIMAL TESTING

同社は化粧品の動物実験を動物虐待行為でもあり、
その信頼性も低いとし、一貫して反対しています。
その取組みは、世界の主要な動物保護団体にも認められ、
それらが設定した厳しい基準「Humane Cosmetics Standard(化粧品の人道的基準)」を
初めて満たした企業となっているんですね。
<具体的な取り組み・成果>
動物実験反対キャンペーン
?国内で化粧品およびトイレタリー製品の動物実験禁止へ
?英国RSPCA(王立動物虐待防止協会)
2009年化粧品部門特別功労賞(Lifetime Achievement Award)受賞

(2)SUPPORT COMMUNITY TRADE

コミュニティトレードという言葉は聞きなれないかもしれません。
これは、支援を必要としている地域、経済的に恵まれない生産者と
原材料などの取引関係を継続的に築きサポートするプログラムなんです。

そして、顧客に対しても製品購入によって支援活動に参加しているという
意識啓発に取り組んでいるところは特筆すべきですね。
<具体的な取り組み・成果>
20カ国以上、25000人以上の人々から良質な原料や雑貨を仕入れ
(全原料の約1/10に相当、約7割の製品にコミュニティトレード原料が配合)

(3)ACTIATE SELF ESTEAM

セルフエスティームという言葉も私は初めて知りました。
セルフエスティームとは、自分自身を認め、良いところを発見し、
個性に誇りを持つ、、、そんなポジティブな生き方こそが本当の美しさだ訴えています。
2006年より、女性のセルフエスティームを守るため、DV根絶キャンペーンを展開しました。

<具体的な取り組み・成果>
DV(ドメスティック・バイオレンス)キャンペーンを世界的に展開し、
DV被害者をサポート。寄付金付きキャンペーンも展開

(4)DEFEND HUMAN RIGHTS

あらゆる人々の人権を尊重することは、道徳的な責任であるとして、
同社の価値観の基本としています。
特に、弱い立場の人々への人権尊重に積極的に取り組んでいるようです。
<具体的な取り組み・成果>
トラフィッキング(人身売買)反対キャンペーン
イエス!キャンペーン(エイズ啓発活動)

(5)PROTECT OUR PLANET

そして、最後が定番の「環境保護のテーマ」ですね。
再生素材を利用したパッケージを積極的採用にはじまり、
製品の原材料調達、製造、輸送、販売、廃棄物の処理まで、
地球環境への負荷の削減を目指しています。
<具体的な取り組み>
簡易包装促進、エコバッグ促進、環境配慮型容器
店舗にも、環境に配慮した木材、リサイクルガラスを使用
生態系を脅かさない栽培法によるパーム油使用

CSRに求められる基本精神

このようにザ・ボディショップは、ワールドワイドの視点で
大きな社会問題となっている5つのテーマに取り組んでいるわけです。
これは、「ソーシャルマーケティングの新たな姿」でも述べた

・献身的(見返りを求めない)
・持続的(すぐに止めない)
・独創的(横並びでない)
・本質的(表層をなぞらえない)
・全社的(個人に頼らない)


という視点をしっかり押さえていますね。
特に、しっかり理念に記され、一過性の取り組みではないことがわかります。
この基本精神が、本来のソーシャルマーケティングの成果を上げる要因です。
ここで言う「ソーシャルマーケティングの成果」とは、
 「企業的成果」と「社会的成果」の両面を指します。

 「企業的成果」とは、これらのメッセージが顧客からの持続的な支持をとりつけ、
売上やシェアに繋がっていくことでしょう。
また、中長期的にも、ブランドイメージにおける好感度を高め、
IRの視点からも株価を押し上げ、企業価値を高めていくことでしょう。

また「社会的成果」としては、顧客に対し社会的問題に対する意識を醸成するとともに、
誰でも手軽に社会的問題への取り組みに参加する機会を提供してくれます。

この両面の成果をもたらす活動が一過性のものに終わることなく、
ビジネスモデルの中にインストールされていることが求められていると思うのです。

CSRとソーシャルマーケティンに対する積極的取り組みと、
それを社会に向けてしっかり広報していくマーケティング活動が両輪となって、
企業の理念ビジネスモデルの中にしっかりとインストールされていくことが、
今後の企業経営に欠かせない時代となりそうですね。



株式会社シナプス 代表取締役 家弓正彦
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